こんにちは、草男です。
福井で農業を学びながら、日々畑や雑草と向き合っています。今日はニュースや農業本でもよく目にする「耕作放棄地(こうさくほうきち)」についてのお話です。
「昔は田んぼやったのに今は荒れてるなぁ」とか「使われてない畑が雑草だらけになってる」って風景、見たことありませんか?
それこそが耕作放棄地なんです。この記事では、耕作放棄地の意味・増加の理由・影響・再生の課題や活用の可能性を、できるだけ親しみやすくまとめてみました。
耕作放棄地とは?
一言でいうと、**「農地やけど、もう畑として使ってない土地」**のこと。
農林水産省の定義では「1年以上作物を作らず、今後も作る見込みがない農地」とされています。
よく似た言葉に「休耕地」がありますが違います。
- 休耕地:一時的に作付けを休んでいる土地(また再利用予定あり)
- 耕作放棄地:もう農業に使う意欲や計画がなく、半分“見捨てられた”土地
つまり「農地の形はあるけど機能してない土地」ってことですね。
なんで耕作放棄地が増えてるの?
1. 高齢化と後継者不足
農家の平均年齢は70歳近く。体力的に続けられなくなっても、後継ぎがいないから畑がそのまま放置される。
2. 収益性の低さ
「しんどい割に儲からない」。市場価格が安定せず、やる気をなくす人が増えているのが現実です。
3. 過疎化・人口減少
若い人が都市に出ていき、地元で農業を続ける人が減る → 管理する人がいなくなる。
4. 条件の悪い農地
山間地や斜面の田んぼは機械化が難しく、効率が悪い。結果的に放棄されやすい。
耕作放棄地の面積はどれくらい?
農林水産省の統計によると、耕作放棄地は年々増加しており、すでに日本の農業に大きな影響を与える規模になっています。
耕作放棄地・荒廃農地の面積(ヘクタール)
区分 | 面積 | 補足 |
---|---|---|
耕作放棄地(農家の意思による主観ベース) | 42.3万ha | 2020年(令和2年農林業センサス)。国内農地全体の約1割に相当。 |
荒廃農地(客観ベース:現地調査で耕作不能と判断) | 25.7万ha | 令和6年度時点。 |
うち再生可能な荒廃農地(1号遊休農地) | 9.4万ha | 草刈り・整備をすれば再利用可能。 |
1995年の耕作放棄地面積 | 約25万ha | この25年間で約1.7倍に増加。 |
※参考:滋賀県の面積は約40万ha → 耕作放棄地は県ひとつ分に匹敵します。
出典
- 農林水産省「荒廃農地の発生状況と再生利用状況(令和5年度)」【PDF】
https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/ - 農林水産省「2020年農林業センサス(耕作放棄地)」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/
耕作放棄地が増えるとどうなる?
- 食料生産力の低下 → 自給率が下がる
- 雑草や害虫の温床 → 周囲の畑にも悪影響
- 獣害の増加 → イノシシやシカが住みつき、農作物を荒らす
- 景観の悪化・防災リスク増大 → 見た目が荒れるだけでなく、土砂崩れや水害リスクも
放棄地は“持ち主の問題”にとどまらず、地域全体に被害を広げる存在なんです。
再生は本当にできるの?
最近では「耕作放棄地を若者が再生した」なんて美談がニュースで取り上げられることもあります。
ただ実際の現場では、長年放棄された土地はクズや雑木が生い茂り、重機や大量の労力がないと再生できないのが現実です。
さらにそういった場所は、もともと中山間地など条件が不利なところが多い。せっかく整備しても収益性が低く、再び放棄される可能性も高いんです。
だから「耕作放棄地を全部再生する」ことだけが解決策ではなく、今ある農地をどう維持するかという視点も大切だと思います。
人口減少が進む以上、耕作放棄地がゼロになるのは正直難しい。ある程度は仕方のない流れやと割り切って、**「守る土地」と「諦める土地」を分けて考える」**ことも必要かもしれません。
活用の可能性もある
それでも放置しっぱなしはもったいない。工夫すれば活用の道もあります。
- 新規就農者や企業に貸し出す → 新しい農業の拠点に
- ソーラーシェアリング → 農地+太陽光発電で収益確保
- 放牧地 → ヤギや牛に草を食べてもらい管理コスト削減
- 市民農園や体験農業 → 地域住民の交流や教育の場に
再生が難しい土地もありますが、「活かせる土地」をどう見極めるかがポイントになりそうです。
まとめ
耕作放棄地とは「農業に使わなくなった農地」。
背景には高齢化や後継者不足、収益性の低さ、地域の過疎化といった社会全体の問題が隠れています。
「再生すればいい」と簡単に言われることもありますが、現実にはコストも労力もかかり、条件の悪い土地は再び放棄されやすいのが実情です。
これからは「放棄地をどう活かすか」と同時に、「今ある農地をどう守るか」というバランス感覚が求められていくでしょう。人口減少が進む中で、ある程度の放棄地の増加は避けられないかもしれません。でも、それを前提に農業の未来を考えることが大切だと思います。
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