はじめに:農業は“儲からない”って本当?
「農業って儲からないんじゃないの?」
このフレーズ、実はよく聞きます。けれど、私は福井で農業を学びながら、実際にいちご農園でアルバイトをしてきて、そのイメージは少しずつ変わりました。
大変なことも確かにあります。寒い朝にハウスへ入ること、重たい資材を運ぶこと、そして繊細ないちごの手入れ。けれどその先に、**「自分の手で育てたものが、誰かに食べてもらえる」**という喜びがあるんです。
そして驚いたのは、いちご農園の売上や経営の工夫。
直売所・観光農園・ネット販売と、いろんな販路でしっかりと収益を出している農家さんもいました。
私は今、若い世代がもっと農業に関心を持ってくれたらいいなと思っています。
本記事では、これから農業を始めたい方や、副業として検討している方に向けて、**実際に“儲かる可能性がある作物”**をわかりやすくご紹介していきます。補助金制度や初期費用についても触れていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
農業は“やれば儲かる”わけじゃない。だからこそ準備が大事。
農業は、自然相手の仕事です。だからこそ、「儲けたいからやる」だけでは難しい。
けれど、正しい知識と準備、そして販売戦略があれば、しっかりと利益を出すことも可能です。
特に本格的に取り組む場合は、以下のような初期投資が必要になります:
- ハウスや設備の設置費(数十万〜数百万円)
- 苗・肥料・資材などの消耗品費
- 機械類や灌水設備の導入
これらは決して安くはありませんが、国や自治体による補助金制度を活用すれば、負担をかなり軽減することができます。
補助金制度ってどんなものがあるの?
農業を始める人を支援する制度として、たとえば以下のようなものがあります:
- 農業次世代人材投資資金(最大年間150万円の給付)
- 青年等就農資金(無利子融資)
- スマート農業関連の設備補助金
- 地方自治体の独自補助(例:ハウス建設、ICT導入など)
これらは、事業計画や研修、地域との連携が必要になる場合もありますが、若い世代や新規就農者にとって大きな支えになります。
儲かる作物を選ぶときの視点
農業で収益を上げたいとき、作物選びはとても重要です。私がいちご農園で感じたことも踏まえて、ポイントをまとめてみました。
- 需要がある作物かどうか(食べたい人・買いたい人がいるか)
- 小面積でも利益が出るか(高単価やリピーターが狙えるか)
- 自分に合った作業量か(無理せず続けられるか)
この3つを軸に、以下では実際に「儲かる」と言われる作物を紹介します。
農業で儲かる作物6選(詳細解説)
1. ミニトマト(高糖度品種)
■ なぜ儲かる?
ミニトマトは色や形が可愛らしく、糖度の高いフルーツトマト系は直売所やネット販売でも大人気。1kgあたり500〜1,500円で販売でき、リピーターがつきやすいのも魅力です。
■ 栽培の特徴
- 収穫期間が長く(4〜5か月)、複数回に分けて出荷できる
- 高温多湿を嫌うため、ハウス栽培+換気管理が大切
- 灰色かび病やうどんこ病などの病気対策が要
■ 初期投資の目安
- ハウス設置+潅水設備:約100〜300万円(面積・方式による)
- 苗・支柱・肥料などの初期資材費:約10〜30万円
■ 補助金対象?
高設栽培設備・環境制御機器・水耕設備などは、国や自治体の補助対象になりやすいです。若手就農者向けのICT導入支援とも相性が良いです。
2. イチゴ(高設栽培)
■ なぜ儲かる?
1パック400〜800円程度で販売可能。観光農園や加工販売(ジャム・スイーツ)と組み合わせれば、単価以上の収益化が見込めます。
私自身も福井のいちご農園で働いた経験がありますが、収穫の手間はあるものの、お客様の「おいしい!」という声を聞ける瞬間は格別です。そして何より、直売やいちご狩りでの利益率の高さに驚かされました。
■ 栽培の特徴
- 冬〜春が最盛期。寒冷地でも育てやすい
- 高設栽培なら作業効率がよく、腰を痛めにくい
- 手間はかかるが、品質によって価格に差がつく
■ 初期投資の目安
- 高設ベンチ+ハウス:約500〜800万円(規模・仕様による)
- 育苗や冷房設備を導入する場合、さらに追加投資あり
■ 補助金対象?
「次世代施設園芸」「観光農園支援」など多くの制度と相性が良いです。特に観光農業として位置づけられれば自治体の後押しを受けやすい分野です。
3. シャインマスカット
■ なぜ儲かる?
高級果実として定着し、1房2,000〜5,000円以上の価格で売れることも。特に贈答品・ふるさと納税向けの需要が強く、農協出荷に頼らずとも利益が出やすい作物です。
■ 栽培の特徴
- 定植から収穫まで2〜3年必要
- 摘粒、房づくり、袋掛けなど、丁寧な管理が求められる
- 一度樹が育てば、毎年安定した収穫が可能
■ 初期投資の目安
- ブドウ棚+資材+苗:約200〜500万円(10a規模)
- 初収穫までは収益ゼロの年もあるため資金計画が重要
■ 補助金対象?
果樹振興支援・輸出促進・省力化機械導入など幅広く支援対象となることが多いです。定植初期の支援を受けられる場合もあります。
4. ハーブ類(バジル・パクチー・ミントなど)
■ なぜ儲かる?
1袋あたり200〜500円と単価は控えめでも、小面積・高回転で売れるため、トータルでの利益が大きくなることも。無農薬志向や料理好き層にファンが多く、飲食店や個人宅向けの直販に向いています。
■ 栽培の特徴
- 栽培期間が短く(1〜2か月)、次々と植え替え可能
- プランター・露地・簡易ハウスなど柔軟に対応可能
- 病害虫には比較的強く、初心者向き
■ 初期投資の目安
- 自宅の空き地やハウスで小規模スタート可能(10万円前後〜)
- 都市型・家庭菜園的なスタイルからでも始めやすい
■ 補助金対象?
都市農業振興・小規模経営支援・6次産業化補助金などに該当するケースがあります。飲食店との連携による民間助成の対象になる例も。
5. アスパラガス
■ なぜ儲かる?
春先の端境期に出荷でき、単価も高め(1kgあたり800〜1,500円)。市場出荷・直売・業務卸と幅広く販路を持ちやすい点も魅力です。
■ 栽培の特徴
- 多年草で、一度植えれば7〜10年ほど収穫が続く
- 春〜初夏が主な収穫時期。日照・水はけの良い土地が◎
- 定植後、2年目以降から本格収穫可能
■ 初期投資の目安
- 苗・マルチ・灌水設備など:約20〜50万円(10a規模)
- 大型機械は不要なため、コスト抑制が可能
■ 補助金対象?
新規作付・省力化支援・繁忙期対策などの農業支援金で対象となるケースあり。露地栽培でもOKなため、導入しやすい作物です。
6. キクラゲ・しいたけ(菌床栽培)
■ なぜ儲かる?
スーパー・飲食店・通販で安定した需要があり、特に「国産キクラゲ」は希少価値が高く、100gあたり300〜600円で販売可能。室内での周年栽培が可能な点も強みです。
■ 栽培の特徴
- ハウスや倉庫を利用して、温湿度管理のもと栽培
- 難易度は中程度だが、設備を整えれば安定生産が可能
- 回転が速く、現金化までのスパンが短い
■ 初期投資の目安
- 温湿度管理設備+棚などで約50〜200万円(規模による)
- 菌床購入+収穫用具など、消耗資材費もかかる
■ 補助金対象?
省エネ設備導入・スマート農業補助金などに該当することも。空き家活用や都市近郊農業としての支援が受けやすい分野です。
このように、作物ごとに「収益性・栽培のしやすさ・初期投資・補助金対象」のバランスが異なります。
農業をビジネスとして成功させるには、自分の興味・地域性・労働時間との相性を見ながら選ぶことが大切です。
※今回ご紹介した作物ごとの初期費用や投資額は、あくまで一例です。設備の仕様、面積、地域、販売戦略などによって金額は大きく変わります。就農を検討している方は、まずはご自身の地域の農業普及センターや市町村の就農相談窓口に問い合わせるなど、「自分に合った条件」で具体的な情報を調べてみることをおすすめします。
若い世代にこそ農業の魅力を伝えたい
いちご農園での仕事を通して、私は「農業って、もっとカッコよくて、面白いものだ」と感じるようになりました。
そして、SNSやネット販売、デザイン、マーケティングなど、現代の若者が持っているスキルを農業に活かせる場面はたくさんあると実感しています。
「儲かるかどうか」ももちろん大事。でも、それ以上に、自分の手で価値を作って届けるという体験は、何物にも代えがたい喜びです。
まとめ:初期投資を乗り越えて、“続けていける農業”を
農業でしっかりと収益を出すには、正直に言えば時間もお金もかかります。
でも、補助金などの支援制度をうまく活用すれば、ハードルを下げてスタートすることが可能です。
作物選び・販売方法・地域とのつながり。
少しずつ整えていけば、「自分らしい農業スタイル」で生きていくこともきっとできます。
興味を持ったタイミングが、始めどきです。
私のように、まずはアルバイトでも、見学でも構いません。農業の現場に触れてみてください。そして、自分なりの“儲かる農業”を、じっくりと育ててみてくださいね。
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