はじめに:農業も少子高齢化の影響を大きく受けている
こんにちは。私は福井で農業を学んでいる大学生です。
近年、社会全体で「少子高齢化」が大きな課題として取り上げられていますが、授業や実習の中で特に印象的だったのが、農業分野における高齢化の深刻さでした。
「農家の高齢化が進んでいる」「後継者がいない」「放棄地が増えている」…
そういった話を聞く中で、「じゃあ、実際に農業の高齢化ってどれくらい進んでいるの?」と疑問に思い、調べてみることにしました。
この記事では、農家の高齢化の現状、そこから生じる問題、そして今後の展望や私たちにできることについて、学生の視点から分かりやすく紹介していきます。
農家の高齢化はどれくらい深刻なのか?
最新データから見る現実(2023年時点)
- 農業就業人口:約116万人
- そのうち65歳以上の割合:約69.6%
- 平均年齢:67.9歳
これは、他の産業と比べても極端に高い数字です。
例えば日本全体の就業者の平均年齢が約47歳であることを考えると、農業の高齢化は突出していることがわかります。
家族農業が多い=後継者がいないと消える
農家の多くは、企業ではなく家族経営や個人経営で運営されています。
そのため、後継者がいない場合には、高齢の農業者が引退した時点で、農業がそのまま終わってしまいます。
後継者不足によって年間5万戸以上の農家が姿を消しているとも言われており、これは単なる「高齢化」ではなく、農業そのものが地域から消えていく危機だと感じます。
高齢化によって起こる具体的な課題
1. 耕作放棄地の増加
農業を続ける人がいなくなれば、畑や田んぼがそのまま放置されることになります。
全国の耕作放棄地は2020年時点で約42万ha。これは九州全体の約1.1倍に相当する広さです。
耕作放棄地が増えると:
- 景観が悪化する
- 害獣のすみかになる
- 地域のインフラや治水にも影響
といった問題も生じます。
2. 食料自給率の低下
高齢化とともに農家が減り、国内での生産力が落ちてくると、日本の食料自給率はさらに低下する可能性があります。
現在のカロリーベースの自給率は37%前後(2023年)と、先進国の中でも非常に低い数値です。
3. 技術・知見の断絶
長年の経験や地域ごとの知識(例:気候に合った作型、水管理のコツなど)は、高齢の農家が持っている貴重な財産です。
しかし、継承する人がいないと、それらが失われてしまうという問題もあります。
若手が入りにくい理由は?
高齢化の一方で、「農業に興味がある若い人も増えている」という話もあります。
では、なぜ若者の参入が進まないのでしょうか?
● 初期投資が大きい
ハウスや機械、土地の取得など、スタートに数百万円単位の資金が必要。
● 安定収入を得にくい
自然相手なのでリスクも多く、「家族を養える収入」が見込みにくい。
● 地域に馴染みにくい
移住して農業を始める際、地域との関係構築がハードルになる場合も。
それでも希望はある。新しい流れも生まれている
課題が多い農業界ですが、最近では前向きな動きも広がっています。
1. スマート農業の普及
センサーやドローン、アプリでの作業管理など、IT技術によって負担を減らす動きが進行中。若者でも参入しやすい環境が少しずつ整っています。
2. 新規就農支援制度の充実
国や自治体が支援する「農業次世代人材投資資金」などにより、年間150万円の給付支援が受けられるケースもあります。
3. 若手農家のネットワーク
SNSやイベントなどで、同年代同士が情報交換・協力できる仕組みも増えています。孤立しにくい環境づくりが進められています。
私たちにできることとは?
農家の高齢化は、他人事ではありません。
将来的に「食べ物をどうやって手に入れるか」に直結する、大きな社会課題です。
私自身も、将来農業に進むかどうか悩んでいるところですが、まずは関心を持って、知ることが第一歩だと感じています。
そして、次のような行動が誰でもできることです:
- 単発バイトなどで現場を体験してみる
- 農業イベントや地域のマルシェに参加してみる
- SNSで農業アカウントをフォローする
- 農業をしている人の声を聞く・発信する
よくある質問(FAQ)
Q. なぜ農業だけこんなに高齢化しているの?
→ 収入の不安定さ、重労働、人手不足などが若者の参入障壁になっています。さらに、家族経営が多く後継者に頼る構造も原因です。
Q. 高齢農家の後継者はどうやって探されている?
→ 親族以外の後継者を募集する「農地バンク」やマッチング制度もあります。ただし、地域によって制度の活用状況は異なります。
Q. 若者が農業に参入するにはどうすればいい?
→ 就農支援制度の活用、研修付きの農業法人就職、地域おこし協力隊の活用など、段階的に始められる方法があります。
まとめ:農家の高齢化は、未来の「食」を守るための大きな課題
農家の高齢化は深刻な問題です。
でも、それは「もうダメだ」という話ではなく、今だからこそ、自分たちの手で未来を変えるチャンスでもあります。
農業に興味を持ったその気持ちを、どうか大切にしてください。
まずは知ること、そしてできるところから関わってみることが、未来の食と農業を守る第一歩になります。
農業は、今まさに“次の世代の手”を求めています。
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